●オートハープの定義等(1) ●オートハープの構造(2) ●オートハープの動作(3) ●オートハープの種類(4)

オートハープの構造

<オートハープのタイプ>

オートハープは、その構造から大きく2種類に分類することができます。

種類 写真 説明
Aタイプ(model-A) 準備中

オスカーシュミット(OS)の古いタイプ、多くの職人製オートハープなどがAタイプであり、以下の特徴をもつ。

  • エンドピンがある(ファインチューナーつきの場合はエンドピンはない)

  • 弦の振動を伝える部分がギターのナット&ブリッジのようになっている

職人製オートハープの多くがこのタイプであることからわかるように、手作り向きな構造である。また、Aタイプに比較して大きな音が出やすい。OSも最近、復刻モデルとしてこのタイプのオートハープを出した。もちろん、映画「君に続く道」で使われたOS#73もこのタイプである。
Bタイプ(model-B) 準備中

オスカーシュミット(OS)の現在のタイプなどがBタイプであり、以下の特徴をもつ。

  • エンドピンではなくストリングアンカーがある

  • 弦の振動を伝える部分がギターのブリッジのようではなく、ストリングガイドポストとストリングアンカーになっている

このタイプは大量生産のために作り出されたと考えられる。理由はBタイプに比較して木工部分が少ないためである。AタイプはBタイプに比較して音量が少なくサスティン(音の長さ)が長い。個人的見解であるが、構造的に多くの音量を得ることができず、音自体もよいとはいえないと感じる。あくまで普及モデルであり、オートハープを引き続ける人はやがて職人に製作を依頼するというケースが多いように思える。

<オートハープ各部>

オートハープの各部分について以下に説明します。

部分 説明
ボディ(トップ) ギター等と同様、音質を決める重要な部分。しかし、弦の大きな張力に耐えるため構造材としての機能も必要なことから他の楽器に比べて厚く(5mm以上)、このため材料の違いによる音質の違いも他の楽器ほどにはでない。
大きくは単板と合板に分類され、単板の方が高く、音もよいとされている。
ボディ(バック) 通常は硬い材料が使われる。これは、抱いて弾く演奏方法が主流となったことが関係していると考えられる。すなわち、バックの音の振動は人の体に吸収されるため音として出ることが少なく、前面に反射するようにしたほうがよいと考えられた可能性がある。実際、置いて弾いたり、オートハープを体から離して弾くと少なくない音がバックからも出ることが確かめられる。
ボディ(ピンブロック) ボディの厚みを出し、弦の大きな張力に耐えるための部分。昔は無垢であったが今は強度の関係から積層板がほとんど。ブロックは、ピンブロック・サイドブロック・エンドピンブロックに分けることができるが、一枚の積層板をくりぬいて一体で作る方法もある。とにかく強度優先の部分である。
ボディ(エンドピンブロック) ボディ(ピンブロック)と同様。ブロックが分離の場合、サイドブロックとの結合がきちんと加工されていないとエンドピンブロック浮きが生じ、弦がコードバーに触れた状態となる。この現象はOS#73によく見られる(サイドブロックとのホゾ加工がいい加減)。
ボディ(サイドブロック) ボディ(ピンブロック)と同様。
ブレイシング オートハープにかかっている大きな張力を支え、また、弦の振動をトップとバックの広範囲に伝えるための機構。
ギター等の場合は音に大きな影響を与えるものとしての役割が大きいが、オートハープの場合は張力に耐えるものとしての役割が大きい。
チューニングピン チューニングピンは四角柱の頭を持ち、チューニング用レンチで回転できるようになっている。チューニングピンの下部にはゆるいテーパーが付いており、細かなねじもきられている。このため、チューニングピンをまわすと木に差し込まれていき、ピン穴も広がる。頻繁な弦交換やチューニングは致命的なピン緩みを生じさせる可能性がある。ピン緩みは致命的で修理は大掛かりである。なお、オートハープのチューニングピンはチター用にも使われる。
ストリングブリッジピン OS等に使われているナットと同等の働きをするピン。
弦の振動はトップと垂直方向の動きが効率的に伝わるが、ストリングブリッジはほとんど水平方向しか動かない。このため、ストリングブリッジピン方式のオートハープは音が小さい。
コードバー フェルトを貼り付け、押下し弦を弾いた際に和音が鳴るようにするための棒。OSはアルミ製。木製の場合はコード名が書いたコードバーボタンがつけられている。また、コードバー自体にコード名が書かれている場合もある。
コードバーは弦をミュートするものであるため、ある程度の型さと精度(特に弦が当たる方の面の水平直線性)必要。
コードバーガイド コードバーの動きをガイドするもの。コードバーをすばやく入れ替えできるよう、着脱が簡単にできるような機構を有するものもある。
コードバーガイドカバー コードバーガイドが一体型の場合は存在しないが、分離型の場合に存在する。コードバーを押さえて外れないようにしているもの。
コードバーボタン OS以外のものはコードバーに接着されており木製。ほとんどのものにコード名が記入されている。
コードバーコーム コードバーの動きをガイドするもので、くしのような形状をしている。
コードバーカバー コードバーが外れないよう押さえるものであり、OSのものはコードボタンの位置固定の役目もある。音への影響は不明だが、演奏時に他のコードバーを押下するミスを防ぐ効果はありそう。
フェルト コードバーに取り付けられ弦をミュートする。色、硬さ、幅など、販売元により異なる。
オートハープを長年使っているとフェルトは弦の当たるところが凹み演奏しづらくなる。これを「フェルトが経たった」という。やわらかいフェルトは経たりすく、硬いフェルトは経たりにくいが「当たり」がシビアで演奏時に力が必要となる傾向がある。
フェルトが経たると交換する=リフェルトが必要となる。リフェルトはフェルトを両面テープなどでコードバーに貼り付けた後、弦の当たる部分をカッター等で切り欠くことによって行う。
切り欠き方はOS方式(垂直にコードバーに達するまで切り欠く)と非OS方式(斜めにコードバーに達しないよう切り欠く)とがある。非OS方式がお勧めである。
ナット 主にAタイプのオートハープに取り付けられ、ギター等と同様にトップに弦の振動を伝えている。
オートハープの場合、ナットはブリッジと同じ構造である。
ブリッジ Aタイプのオートハープに取り付けられ、ギター等と同様にトップに弦の振動を伝えている。
オートハープの場合、ブリッジはナットと同じ構造である。
ストリングアンカー Bタイプオートハープのみに取り付けられ、弦のボールエンドを保持し、弦の振動をトップに伝える。
ストリングアンカー(OS製)はアルミであり、弦の張力で保持されている。弦の振動も効率よくトップに伝えられる構造とは言えず、音がよくない原因のひとつになっていると考えられる。
ストリングアンカーカバー Bタイプオートハープのみに取り付けるものであるが、音質に関係ないため無くてもよい。
ファインチューナー チューニングの微調整を行うための部品であり、チューニングピンの反対側に取り付けられる。チューニング幅は半音程度。6角レンチにてチューニングを行うようになっている。
オートハープは大きな張力がかかっているため、温度・湿度の変化に敏感に反応してチューニングが変わってしまう(チューニングが下がるだけでなく、あがることもある)。しかし、頻繁なチューニングはチューニングピンの緩みという致命的な現象をまねく可能性が高い。ファインチューナーがあることによりチューニングピンでのチューニングを最小限に抑えることができる。オートハープを購入する際にはぜひともファインチューナー付きのモデルの選択を勧めたい。
なお、OSでは後付け用にファインチューナーを売っているが、これはアメリカのよく知られたオートハープの先生であるチャールズさんも言っていたようにお勧めできない。音がとても悪くなるそうである。参考までに、OSのファインチューナーは後付でなくとも弦高が変わるなどで評判が悪い。
ストラップピン オートハープ専用のものはなくギター等用のものを用いている。ストラップピンが付いていないものもある。ストラップ自体は必須ではないが、演奏時の保持性のためにはあったほうがよい。
ストラップピンを取り付ける箇所は、通常、オートハープに向かって右上(最高音チューニングピン付近)と左下であり、ストラップ離脱による落下事故防止のため、トップかサイドにつけるのがよいとされている。
アームガイド オートハープを抱いて演奏する場合、左手がオートハープの角やチューニングピンに当たって痛くなる。これを防止または和らげるためのものがアームガイドであり、付いているほうが痛くなくてよい。
アームガイドは、メーカー製オートハープにはほとんど付いていない。
コードバーボタン 種々の材質・形状のものがあるが、大体、そのコードバーのコード名が書かれている。
演奏年数が経つと削れるが、コードバーボタンとコードバーが一体となっていないOS等以外のオートハープでは、コードバーごとの交換となるものが多い。
エンドピンカバー エンドピンやエンドピンによる手への傷付き保護のためAタイプオートハープのみにつけられる。
オートハープは立てかけておいておくことが多いため、プラスチック製のエンドピンカバーの場合は壊れて取れてしまうことがある。
スプリング コードバーを上げて非押下状態にするために用いられている。材質、形状はいくつかあるようだが、強さと伸縮幅が弾きやすさに影響する。
分解時になくすことがないように、スプリングの底をコードバーガイド(コーム)に接着しておくとよい。
ねじ 音には関係がないが、古いオートハープでは+(プラス)ねじが使われていない。製作当時、+ねじが作られていなかったためであり、オートハープの古さやオリジナリティを判断するために調べることがある。
サウンドガイドプレート 演奏や調弦のためのものであるが、ほとんど必要ないと思われる。
インレイ・バインディング オートハープでは、ギター等ほどインレイ・バインディングに凝っているものは少ない。しかし、製作者の技量を示したり、所持者の満足度を向上できる。
サウンドホール サウンドホールの形状と音との関係に関して調査したものを見たことはないが無関係ではないと思われる。クロマハープの旧モデルではサウンドホールがないものもある。
サウンドホールは、現状、「koto-kotoハープ」のy字&すずらん模様のように製作者の識別・主張という意味合いが濃くなっている。
ローゼット ローゼットはサウンドホールの飾りである。「オートコード」にはオプションとしていくつかの模様のものが準備されている。サウンドホールと同様。音への影響は不明であるが、個人の好みで楽しむのがよいと思われる。

<小坂@十勝産が考える理想の(?)オートハープ>

このようなオートハープがあるととてもいいだろうなと考えています。

部分 説明
ボディ(トップ) 後述するようにトップで弦の張力に耐える必要が無い構造とするため、厚みはギター等と同じくらいでよい。材質に関してはどれがよいかは好みによるが、単板で塗装はラッカーかシェラックのうす塗り。
ボディ(バック) 抱いて弾く演奏方法を想定し、音をなるべく多く前面に反射する硬くて内側は滑らかな面をもつものがよい。さらに、できることならば音が効率よくサウンドホールから放出されるような凹面(音響レンズ効果)であるとよい。
ボディ(ブロック) 演奏に支障が無い程度になるべくボディの厚みを出す厚さで、材質はブロックだけで弦の張力のほとんどすべてに対応できる堅牢なものがよい。材料は木材でなくてもよいが、ピンブロック部分は木材。温度湿度の影響も無いものがよい。具体的には積層板で、金属の補強構造材を埋め込んだものがよい。
ブレイシング オートハープにかかっている大きな張力を支え、また、弦の振動をトップとバックの広範囲に伝えるための機構。
ギター等の場合は音に大きな影響を与えるものとしての役割が大きいが、オートハープの場合は張力に耐えるものとしての役割が大きい。
チューニングピン これは通常のものでOK。
ストリングブリッジピン これは、ナット&ブリッジ方式にするため不要。
コードバー OSの21変換キットを使用する。木製は雰囲気があるのはいいが重量があり曲がりなどを気にしなければならない。
フェルト フェルトは演奏しやすさと強度を考慮して中程度の硬さのものを用い、切り欠きは非OS方式とする。
ナット ナットは、断面がブレイシングのようにハープ中央に向かってなだらかに薄くなるようにする。これにより弦の振動をより沢山トップに伝えられる。また、ナットの弦と当たる金属棒は音質的によさそうな真鍮(ベルブラス)製にする。
ブリッジ ブリッジは、ナットと同様に断面がブレイシングのようにハープ中央に向かってなだらかに薄くなるようにする。これにより弦の振動をより沢山トップに伝えられる。また、ナットの弦と当たる金属棒は音質的によさそうな真鍮(ベルブラス)製にする。
ストリングアンカー これは、ナット&ブリッジ方式にするため不要。
ストリングアンカーカバー これは、ナット&ブリッジ方式にするため不要。
ファインチューナー もちろん、装着する。
ストラップピン 演奏時の保持性向上のため装着する。
アームガイド 装着する。
サウンドホール サウンドホールは、音質上、無難と思われる円形とする。

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